刑事裁判の公判の流れ|冒頭手続、証拠調べ手続

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刑事裁判の公判の流れや期間について

刑事事件の公判手続は、どのような流れで行われるのでしょうか。ここでは、事実関係に争いのない簡易事件(自白事件)についての公判手続の流れについて記載します。

まず、起訴から判決言渡しまでの期間については、概ね1月半~2ヶ月位になるものが多いと思われます。起訴から初公判までの期間が1~1月半位となり、次回の判決期日が1~2週間後に指定されることがあります。

1回の審理に要する時間については、冒頭手続から最終弁論まで概ね1時間程度で終了する事件が多いのではないでしょうか。以下、簡単な図と説明により、刑事裁判について解説します。

公判手続(冒頭手続)

人定質問(規則196条)

裁判官から人定質問が行われます。これは、被告人に取り違いがないかを確認する手続きです。

例えば、裁判官と被告人との間で次のようなやりとりが行われます。

裁判官:あなたの氏名は?
被告人:○○○○です。
裁判官:あなたの生年月日は?
被告人:昭和○年○月○日です。
裁判官:あなたの住所は?
被告人:○○県○○市○○です。
裁判官:あなたの本籍は?
被告人:○○県○○市○○です。

起訴状朗読

人定質問が終わると検察官から起訴状の朗読が行われます。

被告人は証言台の前に立ちながら、起訴状に記載された事実に誤りがないかどうか聞きます。

黙秘権等の告知

起訴状の朗読が終わると、裁判官から黙秘権の告知が行われます。

具体的には、下記に記載のような感じで裁判官から説明があります。

(裁判官) あなたには黙秘権という権利があります。あなたは質問に対し、終始沈黙することができます。また答えたい質問に対してだけ答えることもできます。但し、この法廷であなたが供述したことは、あなたの有利不利を問わず証拠となるので注意してください。

被告人・弁護人に対しての被告事件について陳述する機会

黙秘権等の告知終了終、裁判官から被告事件についての意見の陳述をする機会が与えられます。これは、起訴状に記載された事実について、争いがあるのか否かを確認するものです。

例えば、事実関係に争いのない事件であれば「起訴状に記載された事実に間違いはありません。」などと述べることが多いです。

また、否認事件であれば「お金をもらったのは間違いありませんが、騙すつもりはありませんでした」等のように、金銭の授受等には争いがないとしつつも、故意について積極的に争うと陳述をすることもあります。

もっとも、この手続きは陳述機会を付与すれば足りるものです。被告人は答えたくなければなにも答える必要はありません。

例えば、事実関係に争いのない事件では、

裁判官:検察官から朗読された起訴状の内容に何か間違い等はありますか?
被告人:起訴状の内容に間違いはありません。
裁判官:弁護人ご意見は?
弁護人:被告人と同意見です。起訴状に記載された事実関係に争いはありません。

公判の手続(証拠調べ手続)

冒頭手続きが終了すると、証拠調べ手続きに入っていきます。

検察官からの冒頭陳述

冒頭陳述とは、検察官がこれから証拠によって証明する事実を明らかにする手続きです。

具体的な内容としては、被告人の身上経歴、犯行に至る経緯、犯行状況等が陳述されます。冒頭陳述が行われている間、被告人は弁護人の近くの椅子に座ってじっと検察官の陳述を聴くことになります。

検察官の証拠調べ請求

冒頭陳述が終わると、検察官から証拠調べ請求が行われます。これに対し、被告人又は弁護人は証拠意見を述べます。

事実関係に争いがない場合、「同意します」「異議はありません」等の意見を述べることになります。

検察官からの証拠調べの実施

証拠調べの実施は、要旨の告知(規則203の2)により行われることが多いです。

具体的には、逮捕手続書、被害届、被害者の供述調書、被告人の供述調書の内容の要点について検察官が朗読します。朗読が終わると証拠を裁判官に提出します。

刑事裁判については、起訴状一本主義が採用されており、裁判官は裁判開始前には、起訴状しか見ることができません。そのため、この時点で初めて被告事件に関する証拠を目にすることになるのです。

被告人側からの立証

情状証人

事実関係に争いがない事件であれば、検察官から提出された甲・乙号証の証拠調べが実施された後、被告人側からは情状証人を請求するケースが多いと思われます。

情状証人とは、被告人の今後の生活を指導監督していく旨の証言をしてもらう証人です。被告人の親、兄弟、親戚等が証人としてなるケースが多いと思います。

なお、情状証人になってくれる人がいない事件では、情状証人の証人尋問は行われません。

書証

弁号証として書証の証拠調べ請求をすることがあります。

例えば、被害弁償をしたことがわかる書面、被告人の反省文等です。

被告人質問

被告人質問とは、被告人が証言台の前に立って、弁護人、検察官、裁判官からの質問に対して答えていく手続きです。

被告人質問では、罪を犯してしまった原因、原因解消のための方策、今後の生活予定等について被告人の考えを伝える必要があります。

裁判官からの質問では、厳しい質問がなされる場合もあります。裁判官は自白事件であっても、今後の被告人の更正のためにはどのような処分がよいのか真剣に考えています。

被告人としては、自分の考えを具体的に明確に伝えるよう心掛けることが必要です。

検察官の論告、求刑

被告人質問が終わると、検察官から論告が行われます。論告とは、事実及び法律の適用について意見を陳述する手続きをいいます。

論告の最後に、検察官からの求刑が行われます。裁判官は求刑意見に拘束されるものではありません。しかし、検察官は過去の犯罪類型から被告人に適した求刑意見を述べているため、最終的処分がどのようなものになるのかという概ねの参考になると思います。

弁護人の最終弁論

弁護人からの最終弁論では、事実関係には争いはないとしつつ、情状面においての弁論が行われることが考えられます。

具体的には、犯行態様は悪質とまではいえないこと、被害者に対する被害弁償を行い被害感情は少なくなっていること、被告人を支える親族がおり社会での更正は可能であること等の意見を述べます。

被告人の最終弁論

被告人から最後に弁論する機会が設けられます。被告人は証言台の前に立って弁論をします。

具体的には、罪を犯したことを反省し、今後二度と同じ過ちを犯さない旨の弁論をすることが多いと思われます。

裁判官:被告人、今回の被告事件について最後になにかいいたいことはありますか。
被告人:○○については深く反省し、・・・二度と罪を犯さないことを約束します。

公判手続(判決)

判決期日は初公判から1~2週間後に指定されることが多いです。

判決の言渡しは、主文から言渡しされることがほとんどです。主文で執行猶予の言渡しがあるかどうかが示されます。

主文で懲役刑等の言渡しがあった後、少し時間を置き、執行猶予の言渡しがされる場合が多いです。

被告人にとっては緊張の瞬間です。

(裁判官)主文、被告人を懲役○年に処する。・・・(少し間が空き)・・この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。主文は以上です。