トップページ > 家事事件 > 認知について
認知の法的性質は諸説ありますが、分かりやすく説明すれば、認知とは、父親が「この子どもは自分の子どもである」という事実を確認する意思表示のようなものです。
認知により、父子間において法律上の親子関係(扶養義務、相続権)が発生します。
なお、母親は認知を待たずして分娩の事実により当然に親子関係が発生するという判例があります。
したがって、母親から子どもを認知する必要はありません。
婚姻関係にない父親の子どもについて 婚姻関係にない男女の間に子どもが生まれた場合、母親と子どもとの間は分娩の事実により当然に親子関係が生じます。これに対し、父親との関係では、父親の認知により法的親子関係が生じることになります。
そうすると、婚外子が父親に対して扶養料を請求したり、父親の相続人となるためには、前提として父親からの任意認知をうけるか又は強制認知の手続きをとることが必要ということになります。
認知は戸籍法の定める届出により行うことができます(民法781条1項)。
また、遺言によって認知をすることもできます(同2項)。
もっとも、父母が婚姻した後、嫡出子出生届すれば、その届出は認知の届出の効力を有するとの規定があります(戸籍法62条)。
この規定による手続きによれば、別途改めて認知届をする必要はありません。
父親は原則としていつでも認知をすることができます。
例外として、成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができません(民法782条)。これは、父親が子育てを一切していないのに、成人したことに目をつけて子どもに扶養を求めるなど身勝手な行為を防止するためです。
死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、認知をすることができます(民法783条2項)。
胎児の認知について胎児を認知するためには、母親の承諾を得る必要があります(民法781条1項)。母親の承諾が必要とされるのは、母親の名誉や利害を守る必要性があるからです。
子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる(民法786条)との規定があります。
そうすると、認知が無効であると主張する場合は、認知無効の訴え(調停前置)を提起することができます。
具体的な局面として想定されるケースとしては、遺産分割協議を開始しようとしたところ、婚外子の兄弟姉妹の1人について被相続人との間で親子関係がないことが発覚したような場合が考えられます。
父親が認知をしてくれない場合は、認知の訴え(調停前置)を提起することができます(民法787条)。もっとも、認知の訴えは、父の死亡後、3年を経過したときは提起することができません。
父の死後3年以上経過した場合において、親子関係存在確認訴訟を提起した事件がありますが、最高裁はこれを認めませんでした。
1 任意の交渉(母と父の話し合い)
まずは、父親と裁判外で任意交渉するのが時間的、経済的に有効です。
話し合いがまとまれば、胎児認知の届出や出生後に認知届をする旨の約束をすることができます。
また、子どもの出生後の養育費の負担や出産費用の援助、慰謝料の金額などについて合意することができればベストと言えるでしょう。
2 認知調停の申立を検討する。
任意交渉により認知をしてもらうことができない場合、認知の訴えを検討します。
認知の訴えは、調停前置主義がとられています。そのため、訴えを提起するために調停を申立てなければなりません。
認知調停の申立は、子どもの出生後はもちろんのこと、胎児の間にも申立することができます。
胎児認知調停の場合、申立ての趣旨としては、「相手方は申立人の胎児の認知届をする」旨の記載になると考えられます。
胎児認知調停の申立と合わせて、婚約不履行に基づく慰謝料を請求することもできます。
3 認知の訴えを提起する。
調停が不成立となれば、認知の訴えを提起することができます。
認知の訴えの被告は父であり、父の死亡後は検察官が被告となります。
なお、胎児は認知の訴えの原告となることができないし、胎児の母も胎児を代理して認知の訴えを提起することはできないという最高裁判例があります。