トップページ > 民事事件 > 保険請求(車両保険)
車両保険の不払いに関する判例も多く存在します。立証責任について争いになったケースが多くあったのですが、H18~H19にかけて最高裁判例が出ました。そのため、現在では立証責任については概ね整理されているものと思われます。
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まず、自動車の水没事故の事件において、保険金の支払請求をする者(以下、「原告」という)は、事故の発生が被保険者の意思に基づかないものであることについて立証責任は負わないと判断しました。
本件条項は、「・・・その他偶然な事故」を保険事故として規定しているが、・・・(中略)・・・車両の水没が保険事故に該当するとして本件条項に基づいて車両保険金の支払を請求する者は、事故の発生が被保険者の意思に基づかないものであることについて主張、立証すべき責任を負わないというべきである(最高裁H18.6.1 )。
同様に、自動車のひっかき傷のケースでも、判例は原告に被保険者の意思に基づかないものであることについて立証責任は負わないと判断しました。
本件条項は、「・・・その他偶然な事故」を保険事故として規定しているが、・・・(中略)・・・車両の表面に傷が付けられたことが保険事故に該当するとして本件条項に基づいて車両保険金の支払を請求する者は、事故の発生が被保険者の意思に基づかないものであることについて主張、立証すべき責任を負わないというべきである(最高裁 H18.6.6 ) 。
約款条項で「被保険自動車の盗難」が保険事故として規定されている場合、立証責任はどのように考えるのかが問題となります。なぜなら、「盗難」という言葉の概念には、被保険者の意思に基づかないで生じた事故という意味が含まれているからです。
この点については、最高裁は被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったことという外形的な事実を主張立証すれば足り、被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることを主張、立証すべき責任を負わないとしました。
被保険自動車の盗難という保険事故が発生したとして本件条項1に基づいて車両保険金の支払を請求する者は、「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的な事実を主張、立証すれば足り、被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることを主張、立証すべき責任を負わないというべきである(最高裁 H19.4.17 )。
さらに後の最高裁判例では、「外形的な事実」の解釈をしました。
外形的な事実は「被保険者の占有に係る被保険自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと」及び「被保険者以外の者がその場所から被保険自動車を持ち去ったこと」という事実から構成されるものというべきである。(最高裁平成19年4月23日)。
原告は以下の盗難の外形的な事実を合理的な疑いを超える程度にまで立証する必要があります。
①被保険者の占有に係る被保険自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと
②被保険者以外の者がその場所から被保険自動車を持ち去ったこと
裁判例では、外形的な事実の立証について目撃者供述により認定したケースがあります。また、目撃者のいない事案で被害物件が発見されず、犯人が検挙されていない場合、供述内容自体が合理的なものとし、その枢要部分において客観的状況と矛盾なく整合し、かつ、それが客観的合理性を有する弾劾に耐えるものであるときには、原告供述により認定することも許容される旨を示した裁判例もあります。
現実の盗難には次の類型があると考えられます。
いくつかの裁判例を検討すると、次のような事実が考慮要素とされています。
なお、車両保険の不払い問題についての法律コラムも当サイトにあります。