トップページ > 民事事件 > 保険請求(火災)
火災保険の契約をしているのに支払拒絶(火災保険の不払い)される事があります。
保険会社が 「被保険者が故意又は重大な過失によって発生した火災」と主張してくるからです。つまり「保険契約者自身、その家族、従業員等が故意に火災を発生させた」と反論してきます。
保険会社から理不尽な反論がある場合、当事務所までご相談ください。裁判手続をも視野にいれ、保険金獲得のため依頼者と協議を重ね代理人として活動します。
火災保険金の請求については、立証責任について従来争いがありました。
しかし、最高裁判例(H16.12.13)は 「保険者が故意による事故であることの立証責任を負う」と示しました。
本件約款に基づき保険者に対して火災保険金の支払を請求する者は、火災発生が偶然のものであることを主張、立証すべき責任を負わないものと解すべきである。(最高裁 平成16年12月13日判決)
もっとも、上記判例があるからといって、保険金請求をすればあとはなにもしなくてよいということではありません。保険会社の反論に対し、積極的に再反論する必要があります。具体的には、原告に有利な間接事実を積み上げていくことになると思います。
※H16最高裁は、約款の中に保険事故について「偶然の事故」という文言のない火災保険における立証責任について判断を示した判例です。約款の中に「偶然の事故」という文言のある場合については判例の射程が別途問題になるとの見解もあります。
火災保険金請求事件の裁判例を調査・研究しました。
裁判では次のような事情がポイントとなってくると思います。
※保険金請求者を「原告」として説明します。
まず出火原因が何なのかが争いとなります。
保険会社は、原告又はその関係人の放火であると主張してきます。
原告は、次の通り反論するケースが多いです。
①出火場所の状況について
消防署等の火災原因判定書、調査会社作成の化学的分析による調査書により、火災原因を探ります。燃焼のもっとも強い箇所が、火元と認定されるケースが多いです。また、火元付近に灯油成分等がないかも調査されます。裁判例を見れば、消防署の火災原因判定書と異なる事実認定をしている場合があります。これは、調査書に基づく報告を信用できるとして事実認定をしているからです。
②火災建物の機能・用途・取得目的
特に居住するわけでもなく、競売物件を購入したなど、購入の目的が不明確な場合、原告に不利な認定をされているケースがあります。原告としては、火災建物は経済的、機能的に重要な物件であったことを積極的に主張する必要があると思います。
③保険契約に関する事情
裁判の多くは、火災保険契約後、1年も経過しないうちに火災発生しているケースです。また、保険会社と原告の関係も考量している裁判例もあります。例えば、飛び込み客の場合は不利な事情として考慮されています。原告は、なぜ、その保険会社と契約しようと考えたのか、理由を明確にする必要があると思います。 また、火災保険だけでなく契約に地震・水害の特約もあったのかというのもポイントです。
④現場の客観的状況
保険会社は、施錠等の状況から原告の関係者でなければ建物への侵入が困難であったと反論してきます。
例えば、火災現場が施錠されている場合、関係人のみが入退室できるため、関係人の犯行であると主張してきます。
また、施錠されていない場合には、ピッキングがないことを確認し、鍵を管理している関係人の犯行であるとの主張等をしてきます。つまり、施錠がどのような状況であるとしても何らかの反論をしてくる可能性が高いといえます。
原告としては、最終の立入者、立入日時、立入目的、施錠の有無につき確認をし、上記主張に対する反論を検討する必要があります。
また、調査会社から最終立入の日時、施錠の状況等について調査されます。保険金請求者は矛盾のない回答をするように注意する必要があります。
⑤動機について
大抵の事件では、保険会社から、原告に借金があったから故意による放火の動機があると主張されています。
しかし、借金があるとしても支払遅延がない場合には原告に有利な事情として考慮されています。
その他、第三者からの融資、資金援助の可能性があった場合には、資金繰りが行き詰ったとまでは言えないので有利な事情として考慮された裁判例もあります。
⑥火災発生前後の行動
裁判では火災発生前の行動が特に重視されています。
まるで火災を予見しているかの行動をとっていると不利な事情となるでしょう。
裁判例では、事前に保険証書の持ち出しを不審な点として指摘されているケースがあります。
保険証書、大切な預金通帳などが手元にある場合、なぜ、手元にあるのか理由が必要でしょう。