トップページ > 知的財産 > 営業秘密について
IT化が著しい今日、今後は営業秘密の不正取得等をめぐる事件が増加するものと思われます。企業アンケートによれば、営業秘密の流出は中途退職者の関与ケースが多いようです(経済産業省知的財産政策室)。
製品設計図等の技術情報や顧客情報は、パソコン等を利用すれば容易に取得できます。そのため、企業としては、従業員に対する営業秘密の管理方法等の教育が必要です。
会社の顧客情報、製法ノウハウ等であっても、管理状況に問題があれば営業秘密として保護されないおそれがあります。そのため、営業秘密として保護されるための要件を理解するのが重要です。
営業秘密の3要件は、①秘密管理性、②非公知性、③有用性です。
①情報にアクセスできる者が制限されていること(アクセス権の制限)
②情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密でありことが認識できるようにされていること客観的認識可能性の存在)
具体的には、上記の要素を形式的に判断するのではなく、企業の規模、情報の性質、侵害態様等を総合的に考慮します。
例えば、アクセス権限を有する者の限定、アクセス記録、パスワード管理、パスワードの定期的な変更、施錠、入退室制限、資料持出の際の決済制度、警備システムの構築、営業秘密を管理するPCを外部と遮断している、秘密であることの表示、他の情報との区分、社内教育、就業規則での定めなどがあるかが考慮されることなると思います。
特許法、意匠法、商標法等では権利が登録され公示されています。公示により、第三者も権利範囲を知ることができるため独占排他的権利として保護されます。
これに対して、営業秘密には登録制度がありません。
そのため、権利として保護されるには、登録による公示と同視しえるほどに、営業秘密の秘密管理状態が客観的に認識できる状況である必要があると思います。
例えば、製品設計図、顧客情報、仕入先リスト等があげられます。
顧客情報等が営業秘密とされた裁判例
保有者の管理下以外では一般的に入手することができない状態をいいます。書物が学会論文等により容易にアクセスできるような情報は含まれません。 特定人に情報が開示された場合であっても、守秘義務契約等が課されていれば公知とはなりません。
「技能・設計に関して従業者等が体得したノウハウやコツなどについても、事業者が秘密として管理しているものであれば営業秘密となり得るが、事業者によってそのような管理がなされていなければ、営業秘密には該当しない。このため、個人に身についた技能のように管理することが難しいものは、一般的には営業秘密になりにくい」(指針15項)と考えられます。
営業秘密の不正取得行為や取得した営業秘密を使用、開示等する行為については、不正競争にあたります(2条1項4号乃至9号)。
不正競争行為に対しては、差止請求(3条1項)、侵害組成物の廃棄、除去等の請求(3条2項)
損害賠償請求(4条)ができます。
また、技術上の営業秘密が侵害された場合には、損害賠償請求において損害額の推定規定(5条)を用いて計算することができます。
過去の裁判例では、営業秘密(顧客情報等)の不正取得、使用などに関して、数千万円単位で損害賠償請求を認めた裁判例もあります。
営業秘密の不正取得行為等に対し、損害賠償請求の訴訟をする場合、訴訟の場で営業秘密が漏えいしてしまう可能性があります。そうすると、実際に損害賠償請求をすることができなくなってしまいます。
そのような不都合を回避するため、秘密保持命令(10条~12条)、訴訟の公開停止(13条)の規定が設けられています。
罰則については(21条1項3号ないし7号) 十年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(両方課すこともできる)と規定されています。